日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2018 - Part① -
2018年9月。
「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2018@青山学院大学」に参加しました。
このフォーラムは、日本社会が抱える課題に対して解決に向けて働きかけている国、企業、NPOなどの団体や研究機関が集い、議論し、皆で共有して実践につなげる場として開催されています。
今年で3回目で、9月8日(土)~9月9日(日)の2日間開催されました。
昨年も参加したイベントです。
今回は大学の卒論みたいな長文の記事になってしまいました(´・ω・`)
内容を分割し、3部構成でお送りします。
【基調講演】小泉進次郎議員を初めて見た
笹川陽平 日本財団会長、長谷部健 渋谷区長、小泉進次郎 衆議院議員による講演でした。
初めて小泉議員を生で見ました。
キーワードとなるような単語をはっきりと口にした後に間を取る、テレビでよく聴く喋り方でした。
若者自身が納得してやりたいことをする、イノベーションが起こしやすい社会にするための取り組みを身近なところから行動に移しているそうです。
例えば飲み会で1杯目に注文する「とりあえず、ビール」
最近ビールを飲む人自体が減っており、私も仕事の日以外はビールを飲みません。
小泉議員は下の世代の人とお酒を飲む機会があったそうで、1杯目にビールを注文したときに他の人も同調してビールを注文したことがあったそうです。
それ以降、ハイボールを注文することが多いそうです。
ニュージーランドに数名の国会議員と議会視察をしたそうです。
アーデーン首相は第40代目の女性首相で、2018年6月、世界で初めて現役の首脳で6週間の産休を取得しました。
産休中は副首相が代理を務めました。
首相就任の数か月後から妊娠を公表し、またアーデーン首相は同姓婚や女性の活躍を推進しており、首相の周辺は女性スタッフばかりです。
国会改革として、自民党政調会議資料のペーパーレス化を2020年までに行います。
平成31年度衆議院議院運営委員会費で▲4,500万円が概算要求され、これはペーパーレス化の実施による削減で効果が現れます。
各省庁の資料作成時間を圧縮することで中央省庁で働く職員の働き方改革に繋がります。
笹川会長の挨拶の中に、青山学院大学の堀田理事長の経営方針である"Be the Difference"が紹介されました。
"人と違うことを恐れない"という意味の経営戦略で、学生の向学心を支援するための新しい大学の在り方を実現するための考え方だそうです。
【分科会】
今年も各種社会課題に対する解決法を語る分科会が開催され、この3つに参加しました。
何しているのよ政治家 ~不満の声をカタチにしよう~
原田謙介 NPO法人Youth Create代表理事が進行役となり、登壇者は古田大輔 BuzzFeed Japan創刊編集長、おときた駿 東京都議会議員、児玉千明 高浜町議会議員、市ノ澤充 (株)VOTE FOR代表取締役社長の4名でした。
この分科会はウェブ投票を体験できた面白い分科会でした。
(株)VOTE FORが開発したシステムで、スマートフォンから投票でき、制限時間までは投票先を何度でも変更できます。
ウェブ投票の体験として、登壇者4名のマニフェストに投票しました。
- 古田氏は 「#NeverAgainのように、社会問題に関する若者のネットでの発信が、数百万人規模の運動に発展する社会へ。」という内容で、海外のように誰かが声を上げたことに共感して人が集まり、社会を変える運動に発展できる社会を作るべきということを訴えました。
- おときた氏は「ゼロ歳児から一票を!18歳未満の子どもを持つ親権者には、子ども分の投票権を代行できる『ドメイン制度』を導入します。」という内容で、シングルマザーや若者のように票の政治力が働かない層に力を持たせ、高齢者や一部の既得権益層の票を集めるための政治にストップをかけることを訴えました。これは親に責任を持たせることにも繋がり、親子での話し合いをする機会を作ることにも繋がります。
- 児玉氏は「議会や委員会、傍聴席でなく議員1人につき、付き添い人(傍聴者)を一名配置可能な議会にします。」という内容で、政治家になってみなければ分からないことが多いため、有権者自身に当事者意識を持って関心を持ってもらい、投票行動に繋げてほしいことを訴えました。
- 市ノ澤氏は「2022年の参院選でインターネット投票を実現し、2023年の統一地方選までに住民総会を支えるインターネット投票システムを提供します。」という内容で、選挙事務の効率化と選挙に伴う税金や関係者の労働時間削減を図り、住民総会という新しい仕組みと形の実現することを訴えました。
以上が4人の登壇者のマニフェストです。
現在の普通選挙では、投票日に投票するか期日前投票をするかの2択です。
共通するのは上書き投票ができないこと。
もし期日前投票後に議員のスキャンダルや党勢の失速が起こると「あの人(党)に入れたけど失敗したな・・・。」ということが起こるでしょう。
また市役所職員の方々が締切後の開票作業や投票日に何時間も拘束されることなく、リアルタイムでの集計が可能となります。
任期満了による選挙ならともかく、解散総選挙に対して一喜一憂する必要がなくなるでしょう。
この分科会で共感したことは、「政治に関心がないのは、政治に関心がある人しか見に来ない内容を発信している」こと。
だから政治に関心がある層も投票に行かない。
潜在的な政治的関心層にどうやって投票行動を掘り起こすか?
政治に全く関係のないタイトルで注目させる、これは私がブログにタイトルをつけるときに時々やります。
要約筆記や情報保障に関わる人以外にも見てもらいたいからです。
だからInstagramには食べ物や旅行の写真を載せることがあります(笑)
政治家はフワッとした政策や総論を掲げ、問い合わせに対しては個別の意見を合わせていくことが根深い問題であるとの意見がありました。
政策が玉虫色になり候補者にカラーが出ない選挙なる、これは私も同じように感じました。
また任期中に政策が変わることも問題。
選挙で掲げたマニフェストが任期中に変わり、そして選挙のときには「この政策は俺がやったぞ!」と、政策と要望を実現することが仕事であるにもかかわらず、さも当然のごとく言っちゃう。
地方議員や衆議院の任期が4年であるため、PDCAサイクルをもっと短い、例えば各議会のように選挙をやれば議員自身が実現可能な政策を掲げ、また自身の発言にも逃げられない評価される環境ができあがるのでは、という話もありました。
ウェブ投票が実現し、また出馬が簡単でお手軽にできれば、サイクルが短くても有権者に負担がかからなくていいのかなと思いました。
生きづらさの正体 ~挫折は人生のスパイス~
登壇者は西田陽光 一般社団法人次世代社会研究機構代表理事、作家の高橋歩氏、竹井智宏 (株)MAKOTO代表取締役、弁護士の大胡田誠氏の4名でした。
この分科会で印象的だったのは大胡田弁護士。
日本で3人目の全盲の弁護士で、ノンフィクションの『全盲の僕が弁護士になった理由』の著者です。
TBSで特別企画として2014年に放送され、この方の奥様も全盲です。
正直、思っていたのと違うなーっていう内容でした(笑)
私としては現代社会での生きづらさ、特に若者が都市に集中的に住んでいる現状の中から少子高齢化やSNSでの繋がりにフォーカスを当てて議論がなされるのかなと勝手に想像していました。
どうやら違っていたようです。
ブロックチェーンで何が変わる? ~地方創生・国際協力の現場からのヒント~
作家の佐々木俊尚氏が進行役となり、林篤志 一般社団法人Next Commons Lab Founder、竹内知成 ICT4D.JP代表、深山周作 (株)スマートバリューの3名が登壇者でした。
各登壇者がそれぞれの持ち時間の中で取り組んでいることについて発表されていましたが非常に難しい内容で、ついていくのがやっとでした(*´Д`)
そもそもブロックチェーンとは?
「ブロックチェーン」=非中央集権的(分散管理)が考え方で、いつでも使えて、誰でも情報を見ることができ、データの不整合がない(≒不正がな)仮装通貨の基盤技術です。
ネットワーク上で価値の移動を可能とした技術で、現在の技術は「ブロックチェーン2.0」だそうです。
「1.0」はビットコインで、「3.0」は日常生活で使う技術を指すそうです。
一般社団法人Next Commons Lab Founder 林篤志氏
個別の社会課題を解決するのではなく、社会構造(=OS、オペレーティング・システム)そのものを作るべきと考えている方でした。
現在は資本主義市場や国家のような資本家に人とお金が集まる中央集権型の社会構造です。
今後は地域資源を活かした社会起業家が経済圏を資本主義社会として作り、価値を分散・水平展開することになると予想しているそうです。
人間関係を続けるためには物々交換や価値の負債(「この前たくさんもらっちゃって申し訳ないな・・・。」など) 、共感によるコミュニティを指します。
分かりやすい事例でいうと、宗教法人による勧誘から起こる宗教団体というところでしょうか。
ICT4D.JP代表 竹内知成氏
ICT技術での途上国開発が紹介されました。
ブロックチェーンのメリットは①改ざんされにくいこと、②シンプルであること、③分散管理(=誰かがデータを紛失してもリンク先の誰かがコピーを持っている)であるため、それを活かしてシステムの外へ弾かれた人に対する援助に利用し、有効活用しています。
1つは資金集め。
ユニセフ(UNICEF:国連児童基金)仮装通貨による資金集め、寄付に対する出資を行っています。
従来の募金では国際送金に対する時間や手数料がかかるので、仮装通貨での募金に切り替えることで現地での換金が可能となり、円滑な支援に繋げたい想いがあります。
そこで検討されたのがブロックチェーン技術を使って世界中の子供の支援を実施する新興企業への投資です。
私はまだ詳しくないのでどれほど凄いことなのか分かりませんが、債券発行や管理、債権の回収に伴う時間を削減し、限られた投資家のみがアクセスできる場所に台帳を持たせ、分散管理を目指すそうです。
これもブロックチェーンを活用した資金集めだそうです。
2つ目は資金の透明化、お金の流れの可視化。
WFP(国連世界食糧計画)が難民に対して生体認証によるIDを発行した決済を可能とし、大幅なコスト削減と支援記録を実現しました。
シリア難民50万人に生体認証によるIDを発行し、そのIDを使ってキャッシュレス決済で買い物をしてもらいます。
IDとWFPのアカウント情報が光彩スキャナーで照合され、その物流記録から業者への支払が行われるそうです。
現金や電子マネーを利用した従来の方法と比較すると、介在する金融機関がいなくなったことで国際送金手数料や決済手数料が不要となり、98%のコストカットが実現したそうです。
また公式なIDを持たない難民が世界には約10億人いるそうです。
個人のIDを持つことで金融サービスや教育、パスポートの取得などの行政サービスを受けられるため、個人にIDを持たせてブロックチェーンを活用して非中央集権型管理でネットワークを構築する国連支援プロジェクト「ID2020」があるそうです。
これにはアクセンチュアやマイクロソフトなどが参加し、他にも「Ever ID」、「Taqanu」、「Fummi」があるそうです。
3つ目は現場活用事例。
仮装通貨で国際送金ネットワークを構築し、現地の利用者に換金してもらうサービスがあります。
仮装通貨専用ウォレットアプリ”ABRA”は複数のコインを扱うことができる仮装通貨取引所のようなアプリで、送金先のコインに交換して送金することで現地通貨に換金することができます。
金融機関による国際通貨では手数料が高く、途上国では銀行口座を持っていない人が大半なので、例えば出稼ぎ労働者が現地の家族へ送金する事例があるそうです。
一方でガーナのような途上国では、登記した土地の利活用時に地域の首長(チーフ)に許可を得なければ、たとえ土地所有者と契約できたとしても物事が前に進まないそうです。
ブロックチェーンにより情報を繋げられたとしても、法律の枠外にあるルールに対する課題解決が途上国での普及に影響します。
新興国では「リープ・フロッグ現象」が起きています。
新興国は日本と違って社会インフラが整備されていないため、先進国がこれまで発展させてきた技術力を飛び越えて新しいサービスや技術が普及します。
一方で次代の技術が普及しにくいと言われています。
今の日本が該当しており、社会貢献分野において日本のITレベルが低いと言われているそうです。
(株)スマートバリュー 深山周作氏
(株)スマートバリューでは、 電子行政の推進「オープンガバメント」を見据えて自治体と地域住民を繋ぐクラウドサービスを提供しています。
クラウドサービスを実現したい自治体にコンサルティングすることで自治体の公式サイト改修やアラートの直接配信を実現し、コストと手間を削減して行政の効率化を支援しています。
店頭に並ぶ野菜や寄付金に対するトレーサビリティをブロックチェーンにより実現することで、本当にその野菜は無農薬で誰が農家なのか、自分が寄付したお金は最終的に何に使われたのか、ブロックチェーンにより情報を繋ぐことで今まで疑問に思っていたことを解決できています。
また税金のように、誰かが管理していたお金を見える化することで納税者に当事者意識を持たせて、納税したお金が最終的に何に使われたのかを追跡することもできます。
この分科会に参加して、勉強が足りないと感じました・・・。
<第2部:ソーシャルイノベーションハイスクール>
<第3部:ソーシャルイノベータープレゼンテーション>