~右耳を誰かのために~

アウトプットも兼ねて、要約筆記者が発信します。

当事者として発信すること ~パソコン文字通研集会~

2018年8月。

特定非営利活動法人 全国文字通訳研究会主催の「パソコン文字通訳研究集会2018夏」に参加しました。

 

以前、参加したシンポジウムと同じ団体による主催の集会です。

 

yamahoo.hatenablog.com

 

 

 

戸田市議会議員 佐藤太信

佐藤議員は2歳の頃から聴覚障害を持つ人で、2017年4月に初当選した戸田市市議会議員です。

HP:http://satotakanobu.com/

 

佐藤議員は滑舌が良く、話の内容を聞きやすい方でした。

口話・発声訓練をし、日頃から演説をされていることから、非常に苦労されたのだなと思いました。

 

佐藤議員は2歳の頃に失聴し、普通学級で学ばれました。

高校卒業後は障害者雇用により就職しましたが、入社当時の会社は障害に対する理解がなかったそうです。

一方で会議の多い会社だったそうで、情報保障のない社内環境で昇進することには将来的な困難があると判断して10年勤めた会社を退職し、大学院で臨床心理学を学びました。

臨床心理士取得し、埼玉県聴覚障害者協会の理事や青年部長として活動する中、当事者として声を上げて地元から変えたいと思うようになり、議員を目指したそうです。

 

当選後は点字ブロックの補修対応や各地域のイベントに参加されています。

市議会での情報保障は「Liveトーク」という音声認識システムと、県による手話通訳派遣で対応していますが、専任の通訳者を希望されています。

誤変換や数字の間違いが音声認識システムでは発生し、また単発で派遣された通訳者では言葉の裏にある政治的なニュアンスや議会の慣習を正しく通訳できないなどの課題があるそうです。

不足した情報は同僚の議員から筆談や手話で教えてもらったり、議会事務局の議事録を確認したりと、正しい情報を得ることに苦労されています。

手話による情報保障自体が日常生活の情報を保障するための制度であって、議員活動のための手話通訳が認められていないことが背景にあるようです。

 

佐藤議員は、障害者を持つ当事者に関わることは当事者抜きにして決めてほしくないという考えをお持ちです。

実際に健聴の議員の中には佐藤議員一人のために手話通訳と音声認識システムの両方で情報保障を付けることに対して、税金の無駄と考える、理解のない方がいらっしゃるようです。

確かに、市民から徴収した税金を使って一人の議員のために複数の手段で情報保障を付けることには一定の批判があると思います。

但しそれは議会の中で具体策を議論すれば良く、税金の無駄と考えるのは短絡的で、理解のない人の発想だなと私は感じます。

 

聴覚障害を持つ議員は佐藤議員を含めて、全国で4人です。

  • 長野県白馬村議会 桜井清枝さん (2001年~2005年在任)
  • 東京都北区議会  斉藤里恵議員 (2015年4月当選)
  • 兵庫県明石市議会 家根谷敦子議員(2015年4月当選)
  • 埼玉県戸田市議会 佐藤太信議員 (2017年4月当選)

当事者として自ら声を上げて先頭に立つ佐藤議員には、先駆者の一人として活動してほしいなと思います。

 

『パソコン文字通訳者養成テキスト』のアンケート結果報告

以前紹介した「パソコン文字通訳(要約筆記)者養成テキスト」を購入した方にアンケートを取り、その結果報告でした。

 

購入者154名にアンケートを送り、34名から回答がありました。

(※34名が何冊購入したのかは調査対象外で、複数回答形式による調査結果)

要約筆記に対して何らかの関わりがある立場の方が回答し、サークルや個人の勉強用に購入した方がほとんどでした。

全要研の厚生労働省準拠テキストは法律に則っている以上、制度に対する理解をさせる内容や試験勉強のためのテキストであり、実技的な養成が弱いのは確かです。

文字通研の養成テキストは技術の養成に特化したサブテキストであり、それが制作の目的でもあるため、連係入力や新任・現任研修に使いたいとの声が多かったようです。

 

まあ私は未だに見ていないんですが・・・(笑)

あ!これってやるやる詐欺だ∑(OωO; )

 

ログ問題

パソコン要約筆記時にパソコン内に生成させるログは誰のもので、何故利用者は閲覧できないのか。

この問題に対する検討会議の途中経過報告がありました。

但し配布資料が用意されておらず、よく分からない報告でした。

 

会員の方や何年も継続的に参加されていた方であれば話の流れが分かるんだと思います。

しかし私のように非会員で且つ、今年の集会から一般参加した者からすると、登場人物が分かりませんでした。

何が決まってどのタイミングで話がこじれ、誰と誰が揉めたのか、ボタンの掛け違いがいつどのように起こったのか、話が頭に入ってきませんでした。

 

1つはっきりしていたのは、ノートテイクで使用する紙とペンを用意した人に所有権があるということ。

利用者が紙とペンを用意すれば、通訳者は利用者にこれらを返却します。

全要研も認めているようで、この場合に限ればログ問題が解決するそうです。

我々要約筆記者からすればその場の音を可視化しただけなので、手話と同じで保障すれば消えるもので、ログとして残ってしまう以上は主催者に判断を委ねています。

 

私も情報保障の付いている講演会に健聴者として参加したことは何度もありますが、講演原稿をほしいと思ったことはないですし、居眠りをすれば話の中身が分からずに時間だけが過ぎていきます。

 

最後に。

相変わらず若い人が集まらない組織だなと思いました。

やっていることは良いと思うのですが、やり方に問題がありそうですね。

まあ全文通訳を主張する集まりの中で、私のような若い要約筆記者が発言することはやぶ蛇なので何も言いませんが。

 

本質的な話し合いをするのは難しい場だろうなと思います。

この会で製作した養成テキストが全要研の要約筆記者養成テキストのサブテキストとして扱うのは何故か、全文筆記ではなく文字通訳と表現するのは何故か、など。

国の助成金から製作した以上はある程度本音と建前があり、また全要研が実施しているような制度自体への学習を図らせる程の余力がないことを顧みず、一方通行の主張をされる健聴の方がいました。

我々支援者が向かっている先は恐らく同じであるのに、少し悲しいなと思います。